ライティングの基本は「日本語翻訳力」にあり! 手持ちの語彙で自分の主張を表現する究極のライティングノウハウを紹介


英語学習イメージ

こんにちは!教育家の石橋勇輝です。
今回の連載では、
・英語をゼロから学びなおしたい方
・お子様の英語力をアップさせたい方
に向けて、「ゼロからの英語学習法」と題してお送りします。
連載第三回では、「ライティング」にフォーカスして、
・英文読解はできるのに、書けと言われると急に手が止まってしまう…
・すらすらと文章が書けない…
・英文メールの作成の際に、機械翻訳にどうしても頼ってしまう…

そんなお悩みをお持ちの方に向けて、とっておきの内容をお届けしていきますね。

石橋勇輝のプロフィール:小4から公文で英語を始め、留学経験ゼロで中3で英検一級を取得後、TOEIC990点三年連続取得。iELTS 7.5、TOEFL108点。また、家庭教師として数百人の小中学生を個別指導し、駒場東邦や開智をはじめ難関中学校に多数合格させ、英検準1級~5級まで合格に導いた経験を持つ。

「伝えたいこと」がぼんやりしていると文章は書けない

リーディングやリスニングでは点数が取れるのに、英作文になると手が止まってしまう…という方は多いかもしれません。
そうした場合には、「単語」や「文法」、「パラグラフの構成」などの面を検討する前にまず見直していただきたいことがあります。それは、
・「伝えたいこと」が明確になっているか?
という点です。
今までたくさんの方の英作文を指導してきた経験から言って、書き始めようとして手が止まってしまう方の場合、「主張がぼんやりしている場合」が圧倒的に多いです。
例えていうならば「どんなスイーツが好き?」と聞かれて、
「ケーキも好きだけど、プリンも好きかも」と答えているような状態です。
日本人には伝統的に、結論を曖昧にすることで対立を避け傾向がありますが、ディベートが前提の英語文化ではこのスタンスは通用しません。
たとえケーキとプリンのどっちも好きだとしても、
「私はケーキが好き!」と言い切ることから始めましょう。
結論が決まっていない状態で書き始めると、「ダラダラ書き進んでから、結局1からやり直し」、ということになりかねません。
英語の場合、まず最初に「言いたいこと」をバーンと述べて、そこから根拠をつらつらと述べて行きます。
作文の際には、設問文をしっかり読んだ上で、それに正面から向き合う形で
・ある主張に賛成か、反対か(Pro/Con)
・自分の将来の夢は何か(What)
・ある問題に対して、どうやって解決するか(How)

など、5W1Hの何を問われているかを意識しながら、まずは一言で結論を決めてみましょう。
その上で、その主張を「論理的な根拠」や「個人的な体験談」など、さまざまな観点から「肉付け」していきます。

「言い換える力」「比べる力」「たどる力」を意識しよう

「伝えたいこと」が固まっていても、肝心の「肉付け」のところでぴたりと手が止まってしまう方がいます。そうした方は、遡ると「小学生時代の作文の頃から苦戦されてきた」、というケースが多いようです。
私はこれまでたくさんの小学生を指導してきましたが、作文が得意な子は、共通して以下の三つの能力が高いことに気づきました。それは、
・言い換える力
・比べる力
・たどる力

の三つです。

①言い換える力

言い換える力」は、ある文章をたくさんの別の表現に言い換える能力を指します。
例えば、「スパゲッティ」と言われて、「イタリア料理で使われる、断面が円形をした細長い麺」と言い換えるといった具合です。
小学生の場合、先生から言われたことを、そのままおうむ返しに言うのではなく、自分なりのオリジナルの表現に言い換えて答えるような子は、「言い換える力」が高い証拠。
この能力が身につけば、たとえ自分の伝えたいことをダイレクトに表現する語彙を知らない場合でも、より簡単な表現に「言い換える」ことで英語の文章に変換することができます。
例えば「私は焼き菓子が好きです」と言いたくても、「焼き菓子」という単語を知らなければ、言葉に詰まってしまいますよね。そんな時に、「クッキーとかビスケットみたいなスイーツ」と言い換えられれば、「焼き菓子」と言う単語を使わなくても十分意味が通じます。
このように、英作文において重要なのは、難しい英単語をたくさん覚えることではなく、自分の言いたいことを日本語で言い換える訓練を積むことなのです。
こうした「言い換える」力を鍛える練習には、「英英辞典」の活用が効果的です。
英英辞典では、ネイティブにとっても難しい英語表現を、平易な英語で言い換えた表現がたくさん収録されています。すでに知っている単語であっても、英語でそれをどう説明するのかを知ると、新鮮な切り口で捉え直すことができ、発見がたくさんあるのでオススメです。

②比べる力

比べる力」は、自分の伝えたいことを際立たせるために、自分の主張とはあえて反対のものを持ち出してきて、比べる能力のことです。
例えば、スパゲッティの例で言うと、「スパゲッティ」を説明する際に「ペンネ」を持ち出して比較するようなものです。
・スパゲッティは細い棒状だけど、ペンネは太い筒状
・スパゲッティは長いけど、ペンネは短い
・スパゲッティは麺と麺の間にソースが絡むけど、ペンネは表面にある細い溝にソースが絡む

といったように、ペンネと比べることで、スパゲッティの特徴が際立ってくるのがわかりますよね。
PCのスペックを比較したり、公共政策のメリットとデメリットを吟味したり、比較をすることで、ある対象をより詳しく知ることができるようになります。そして何より、この方法によって、短くなりがちな英作文の分量を簡単に「かさまし」することが可能です。
ただし、この際に注意したいのは、「比較対象のどちらか片方を徹底的に応援すること」です。
例えば、「A案とB案を比較して、A案の良さを主張したい」という場合、A案のポジティブな点を徹底的に述べ、B案についてはネガティブな側面を強調したいところです。
試験で求められる英作文は、字数制限が厳しいため、どちらの良い面も比較検討した上で結論を絞るには尺が足りません。
結論を明確にした上で、それを支持するために比較を効果的に利用しましょう。

③たどる力

最後の「たどる力」は、論理的に因果関係を展開していく力です。
例えば、「※雨が降ったから、風邪をひいた」と言われても、「?」となってしまいますが、
「雨が降ったから、土砂降りで濡れて帰ってきて、風邪をひいた」と言われたら、納得できますよね。
この場合、「A:昨日雨が降った」と「C:風邪をひいた」の間に、「B:土砂降りで濡れて帰ってきた」という文章が挟まることによって、因果関係が成立しています。
これだけ聞くと、「そんなこと、当たり前じゃないか」と思うかもしれませんが、英作文の添削をしていると、※の文章のような「論理の飛躍」をしている方が意外にもたくさんいらっしゃいます。
「So」や「Because」で文章をつないでみたは良いものの、「本当にその二つの文章は因果関係でつながっているのか?」という点を吟味して文章を推敲してみると、文章の厚みと説得力が自然と増していきます。
また、こうした能力は、英語の文章読解のスピードをもう一段レベルアップさせるための秘訣でもあるので、リーディング問題攻略のためにも、鍛えていきたいところです。

カテゴリー別に語彙を鍛えよう

ここまで、「言い換える力」「比べる力」「たどる力」という三つの能力にフォーカスしてライティングのコツをお伝えしてきましたが、これらを鍛えていくためにも、英語の語彙をインプットしていくことは不可欠です。
しかし、漫然と単語帳を眺めているだけでは、頭に入ってきづらいのもまた事実。前回お伝えした「エクステンシブ・リーディング」による受動的な暗記に加えて、アウトプットを通して英単語を暗記していく能動的な方法が存在します。
それは、カテゴリー別の語彙暗記法です。
例えば、ライティングのトピックが法律関係の話題であれば、法律関係の関連単語をまとめた単語集を読んで、徹底的にインプットしてから、作文に取り掛かります。トピックが日常生活の風景を描写せよといったものであれば、生活系の語彙を徹底的にインプットします。
インプットの方法はさまざまです。ある分野に特化した単語集といったものも販売されていますし、ネットで「〇〇 英単語」などで調べれば、Web上でその分野における基本的な英語の語彙を紹介したまとめページなども見つかります。あるいは、ChatGPTに、「〇〇に関する基本的な英語の語彙を100個リストアップして例文付きで教えて」などと頼んでみても良いかもしれません。
この方法を使うと、ライティングを前提にインプットすることで、能動的に吸収していくことができると同時に、関連する英単語を目にすることで、書く内容を連想的に思いつくことができ、英作文の効率が格段にアップします。ぜひ試してみてください。

AI時代に「英作文」ができることのメリットは?

ここまで、英作文のコツについてさまざま述べてまいりましたが、「そもそも、英作文はこれからの時代に必要なスキルなのか?」
といった視点もあるでしょう。
現代においては、AI翻訳が盛んになり、生成AIによる自動英作文も簡単に行えます。
しかし、私自身、翻訳業やそのほかの仕事で海外の方とやりとりをしていますが、「AIを間に介さずに伝えた方が、自分の言いたいことが直接伝わる」という実感があります。
特に、英文に求められるのは簡潔さです。ダラダラした文章はすぐに読み飛ばされてしまいます。AI作文は長文が多く、また、逆に短くするように命令すると、言いたいことが抜け落ちてしまったり、礼儀を失したような表現になったりします。
そもそもが「受動的な連想」によって成り立つ生成AIの本質からして、「相手への敬意を表しながらも簡潔に自分の要求を伝えるメッセージ技術」は、AIには代替が難しいスキルだと思って間違い無いでしょう。
最初にお伝えした通り、英作文は「伝えたいこと」を明確化するところが一番重要です。その意味で、英作文の技術を磨くことは、普段の日常生活のコミュニケーションを円滑にしていくためにも欠かせない能力を開発することにもつながっていく素晴らしい旅路になるはずです。

いかがでしたでしょうか。次回は、ここまで培った実力を点数の形で結晶化させ、テストを実際に攻略していくステップについて解説していきます。お楽しみに!