英語の道に終わりはない! 英検1級、TOEIC満点のその先にある世界を紹介


英語学習イメージ

こんにちは! 教育家の石橋勇輝です。
今回の連載では、
・英語をゼロから学びなおしたい方
・お子様の英語力をアップさせたい方
に向けて、「ゼロからの英語学習法」と題してお送りします。
連載第七回では、
「英語の生涯学習」にフォーカスして、
・なんとなく英語を勉強しているけれど、最終的にどこを目指せば良いかわからない…
・自分の英語力に満足してしまっていて、これ以上の学習へのモチベーションが湧かない…
・一通り四技能は磨いたはずなのに、ネイティブとの差がどうしても縮まらない…

そんなお悩みをお持ちの方に向けて、とっておきの内容をお届けしていきますね。

石橋勇輝のプロフィール:小4から公文で英語を始め、留学経験ゼロで中3で英検一級を取得後、TOEIC990点三年連続取得。iELTS 7.5、TOEFL iBT108点。また、家庭教師として数百人の小中学生を個別指導し、駒場東邦や開智をはじめ難関中学校に多数合格させ、英検準1級~5級まで合格に導いた経験を持つ。

試験で測られる英語力には限界がある

英検やTOEIC、TOEFLなどに向けた勉強をしていて、ある程度満点近い成績が取れるようになってくると、「もうこれ以上勉強しなくてもいいのではないか?」という無気力感が湧いてくるタイミングが、少なからずやってくると思います。そして、そういった時には必ず、やる気の低迷の結果としての長期間のスランプが訪れます。
私自身、中学1年の時に英検準一級を取得し、その後何度か英検一級に挑戦して失敗したのですが、その時は「英検一級をとってしまうと、英語の勉強がそれ以上必要なくなってしまうのではないか」という、子供じみた恐怖感が自分の成長を妨げていました。
しかし実際には、英語の学習に終わりはありません。
私自身、中学3年の時に、英検一級のその先に広がる奥深い無限の世界を知り、その事実を実感した瞬間に、自分の心のなかで一つのブレークスルーが起き、結果として英検一級に合格することができたことを記憶しています。
日本で普通に暮らしている限り、英検一級以上の「英語力」が必要になることはほとんどないと思います。しかし一度世界を相手にした途端、英検一級取得が小学校レベルに思えてくるくらいの、無限の英語力の階梯が目の前に迫ってくるのです。その事実を前にすると、今スランプに陥っている方も自然とモチベーションが高まり、目の前の壁と見えしものが楽々と突破できるようになるはずです。

「英語達人列伝」の世界

英語学習の奥深さについて、私の目を開いてくれた本の一つに、斉藤兆史氏による「英語達人列伝」という本があります。この本の中では、岡倉天心、斎藤秀三郎、野口英世、岩崎民平、白洲次郎を初め、日本の歴史の中で「英語の達人」の称号にふさわしい英語マスターたちが、いかにして英語を習得し、活用していったかがイキイキと描かれています。
この本を読めば、英語を本当の意味でマスターした人間たちがつく職業は、例えば外交官であったり、国連事務次長、実業家、あるいは学者であるということがわかります。
彼らの英語力の水準を知っておくと、例えばビジネスマンとして国際的に活躍しようと志している方にとっても、ゆくゆくは大実業家で貿易庁長官にまで上り詰めた白洲次郎氏顔負けの英語力を身につけることが最終的な目標になってくるはずです。
また、英語で何かしらの著作をものしたいと志している方にとっては、「茶の本」を国際的なベストセラーにした岡倉天心氏に負けない英語力を身につけることが目標になるでしょう。
私は自分自身の経験、及びたくさんの小学生を教えてきた経験から、学習における「志」の大切さをつくづく痛感しています。最終的なゴール設定が高ければ高いほど、長い時間をかけて見た時に、得られる学習成果は飛躍的に大きくなってきます。もちろん、目の前に設定するゴールは低くて達成しやすいものを設けた方がいいですが、数十年後の実現を期するスーパーゴールについては、高ければ高いほどいいのです。
その意味で、欧米圏の偉人の多くが古代ギリシアの「プルタルコス英雄伝」に奮い立って青雲の志を立てたように、日本に生きて英語を勉強する我々はこの「英語達人列伝」を一つの目標にすると良いと思います。

英語における「古典」の教養

「プルタルコス英雄伝」に限らず、古代ギリシア・ローマの古典は、日本に生きる我々が意識しないと接することのない教養の一つです。大学では多少学んだことがあっても、社会人になってからこれらの書物を紐解くことは稀でしょう。しかし実際には、英語圏のビジネスマンたちは、これらのギリシア・ローマの古典を「リベラル・アーツ」の形で自然と血肉にしており、カジュアルな食事や交渉の場面でサラリと引用してきます。英語の意味として単にそれを理解できるかどうか、という単純なコミュニケーションではなく、こうした形での「ハイコンテクスト」なコミュニケーションについていけるかどうか、ということこそが、世界で通用する英語力の基準になります。
英語ネイティブにとっての古典は、本だけではなく、映画も含みます。特にアメリカ人にとっては映画が国民のアイデンティティでもあるので、「エデンの東」や「カサブランカ」などといった名作映画などは、セリフの一つ一つにわたって引用の対象になってきます。こうした教養が、単に文化的な意味で人生を豊かにするだけでなく、ビジネスという極めて実用的な場面でも生きてくるのが、生きた英語力の醍醐味でもあります。

時事問題・ニュース英語の理解

生きた英語力が試されるもう一つの現場として、「英語でニュースを理解できるか」という課題があります。CNNやBBC、FOXニュースなどといったケーブルテレビはもちろん、最近ではX(旧Twitter)やRumbleなどでの情報発信がプロのジャーナリストたちによって盛んに行われています。CNNなどは日本語に同時翻訳されながら放送されるものもありますが、X(旧Twitter)などで流れる情報のほとんどは日本字幕がついておらず、生の英語で聞くしか情報を取る手段がありません。
最近では、FOXニュースを解雇された大人気キャスターのタッカー・カールソン氏が、X(旧Twitter)で新番組をスタートし、プーチンやトランプへの独占インタビューを行ったりして話題を呼びましたね。
インターネットの発達によって世界が流動化し、時代の変化のスピードが著しくなった現在だからこそ、国際情勢の動きを英語でリアルタイムで把握することの重要性は増してきています。これらは、英語の四技能のうちの「リーディング」「リスニング」に当たる能力の応用編ですね。

自分の思考を「意訳」して表現する能力

また、「スピーキング」「ライティング」に関わる表現力の観点では、同時通訳のスキルのようなものも、英語の達人の持つべき能力として挙げられるでしょう。
最近では、大谷翔平の通訳を勤めていた水原一平氏が話題になりましたが、ギャンブル癖は別としても、水原氏の通訳スキルには学ぶべきものが数多くあると思います。実際、後任で入ったプロの通訳による翻訳も、ネイティブの耳で聞くとどうしても「水原氏の通訳に比べると迫力が落ちて聞こえてしまう」とのことです。
ただ文字通り翻訳するのではなく、話者が伝えたい内容を文脈も含めて丸ごと意訳し、情感を込めて伝えていく能力。こうした力は、通訳としての仕事を志す人だけでなく、自分の中にある「日本語的な思考」を海外の人に英語の形で伝えていこうとする全ての人が求めるべき能力です。
新渡戸稲造の「武士道」、鈴木大拙の「禅と日本文化」、岡倉天心の「茶の本」、こうした本は日本で出版される前にまず英語で出版され、ベストセラーとなって日本に逆輸入される形になりました。最近の日本では滅多に見られないケースだと言えますが、今後、日本からこうした文化発信者が続々と出てくれば、アニメや漫画だけではない日本の「ソフト・パワー」の増加に貢献できることでしょう。

以上で「ゼロからの英語学習法」の連載は終了となります。
発音のマスターから始まって、四技能を強化して最終的には「英語達人」に至るまでの道のりについてお話ししてきました。私自身まだ成長の途上にある者ではありますが、英語を学習していくことのロマンや素晴らしさが少しでも伝えることができたら、これ以上の幸せはありません。

次回からは、「絶対にやってはいけない英語学習法7選」と題して、初学者の方が陥りがちな学習法の罠にハマらない方法や、より具体的で実践的な英語学習の方法をお送りしてまいりますので、ぜひお楽しみに!