読解力の基本は「レベルに合った多読」にあり! リーディング能力を飛躍的に向上させる「エクステンシブ・リーディング」を紹介


英語学習イメージ

こんにちは!教育家の石橋勇輝です。
今回の連載では、
・英語をゼロから学びなおしたい方
・お子様の英語力をアップさせたい方
に向けて、「ゼロからの英語学習法」と題してお送りします。
連載第2回では、
「リーディング」にフォーカスして、
・読解のスピードが上がらない…
・わからない単語が多すぎる…
・どうやって英語力を上げていけばいいかわからない…
そんなお悩みをお持ちの方に向けて、とっておきの内容をお届けしていきますね。

石橋勇輝のプロフィール:小4から公文で英語を始め、留学経験ゼロで中3で英検一級を取得後、TOEIC990点三年連続取得。iELTS 7.5、TOEFL108点。また、家庭教師として数百人の小中学生を個別指導し、駒場東邦や開智をはじめ難関中学校に多数合格させ、英検準1級~5級まで合格に導いた経験を持つ。

天才シュリーマンの語学習得法とは?

トロイア遺跡を発掘したシュリーマンは、語学の天才としても有名でしたが、彼は、自分がどのようにしてたくさんの言語をマスターしたかを、著書「古代への情熱」の中で明かしています。
それは、「発音をある程度マスターした後、いきなりその言語で書かれた古典を原語で読み、内容について教師とディスカッションをする」というものでした。古典をいきなり、というのはあまりにレベルの高い話ですが、シュリーマンは「その言語で書かれた本を読む」ことが、言語上達の近道であることを教えてくれています。

語彙数=言語の習得度

みなさんは、日本人として、どのように日本語を上達させてきましたか? 
それは、読書を通じて、ですよね。
小学校の教科書には、段階別に合わせて様々なレベルの文章が掲載されていますが、それに加えて、青い鳥文庫や小学館文庫など、様々な子供向けの児童書や絵本などを通して、レベル別の活字にふれてきたはずです。大人になってからも、仕事で使う様々な専門語彙を増やすことに加え、読書を通して語彙を増やし続けていきます。
これは、英語圏で育った人々にも同じことが言えます。彼らの国にも、言語の発育段階に合わせた読書の材料があるのです。
そして、人生を通して培った語彙力が、その人の教養や発想力の源となっていくのではないでしょうか。
つまり、言語の習得度とは、語彙数に他なりません。

自分の語彙数を客観的に把握する

しかし、語彙数は一朝一夕に増えるものではありません。
まずは、自分の等身大の語彙数を客観的に把握しましょう。
英検と、語彙力のレベルの対応関係は以下の通りです。

3級:2100語程度
準2級:2,600~3,600語程度
2級:3,800~5,100語程度
準1級:約7,500〜9,000語
1級:約10,000~15,000語

自分の語彙数のレベルを確認できましたか?
そのうえで、具体的な語彙増強法に入りましょう。
その際、ただ単語帳を読むだけでは物足りません。
現在の自分の語彙数に合った文章をたくさん読んでいくことが重要です。
単語帳で見るよりも、文章で出会う方が、記憶に残ります。
なぜかというと、人間の脳には、自分の脳の内部で推測した意味の方が、外部からインプットされた意味よりも、強く印象に残る性質があるからです。
しかし、意味を推測するためには、自分の知らない単語の周りに、自分の既に知っている単語が7~8割の割合で存在しなければいけません。その意味で、レベルが合っているかどうかが非常に重要なのです。

リーディングの際の注意点

逆に、レベルの合っていない文章を読んでいたらいつまでたっても成長しません。その際の判定基準として、
「ページの中の単語の7割以上が、すらすら意味がわかる単語かどうか?」
という基準で判断しましょう。
70-80%程度わかる単語の中で、2割くらいわからない単語を推測で補っていくようなイメージが大切です。知らない単語があった場合、単語帳を作りたくなるかもしれませんが、タイパが悪い場合があるので、作らなくても問題ありません。
語彙の多さは、プールの水深のようなものです。泳ぎ方も知らないのに、いきなり海で泳いだら溺れますよね。最初は足の届くプールから始めて、徐々に深くしていくことで、海でだって泳げるようになります。それと同じで、自分の泳ぎの実力にぴったりの水深をつねに見定めていくことが重要です。

ペンギン・リーダーズで段階別読書を実践

レベル別の読書を実践する際は、ペンギン・リーダーズがおすすめです。
下記のような段階別の難易度で構成されているので、自分の語彙にあった文章を読み進めていくことが可能です。
Easystarts(全24冊):単語数200、英検4級 
レベル1(全25冊):単語数300、英検4級
レベル2(全48冊):単語数600、英検3級
レベル3(全68冊):単語数1200、英検準2級
レベル4(全38冊):単語数1700、英検2級
レベル5(全45冊):単語数2300、英検準1級
レベル6(全28冊):単語数3000、英検準1級

自分のレベルを見定めたうえで、一週間に一冊程度のペースで読むことをまずは三か月継続してみましょう。(一週間に一冊が読めないようなら、レベルを一段落としましょう。)
ペンギン・リーダーズのいいところは、欧米圏で古典と言われる名作小説に、簡単な形でふれることが出来る点です。あらすじを良い感じに要約して伝えてくれているので、短時間で教養が身につきます。オスカー・ワイルドの「ドリアン・グレイの肖像」や、スタインベックの「怒りの葡萄」など、なかなか原著に手が出づらいものも、要約版で学べるのは大きな利点です。
学校英語では出てこない感情表現や動作表現、五感に訴える生活表現(においの表現など)にふれることができるのも、ペンギン・リーダーズならではです。
学校英語しか習っていない人に、「英語で食レポできますか?」と聞いてみたら、おそらくできないでしょう。私もそうでした。食は、嗅覚や味覚などについての表現語彙を必要としますが、学校英語ではせいぜい「Delicious」「Yummy」くらいしか習いません。
一方、ヘミングウェイが「移動祝祭日」の中でカキを食べるシーンを独特なタッチで描いていますが、こうした文豪の五感表現に触れると、「Succulent(肉汁たっぷり)」といったおしゃれな表現ができるようになります。

読んだら、書評をSNSで投稿しよう

文章を読んだら、次はそれをアウトプットしましょう。アウトプットすることで、自分が本の内容をどの程度理解できているのかを客観的に振り返ることができます。
その際のお勧めは、Amazonが提供する「Goodreads」というSNS。ここでは、自分が読んだ本の書評を、全世界に向けて投稿することができます。SNSでは参加している人たちの民度が重要ですが、Goodreadsは他のSNSに比べても「読書好きの教養人」が多い印象のSNSなので、知的なフィードバックをもらえる可能性が高いです。また、自分が投稿する際は、他の人のレビューも目に入るので、他の人がどんな感想を持ったのかも知ることができ、理解が深まります。

読書→書評投稿で、疑似留学体験を

最近流行りの「オンライン留学」。その中でもUniversity of Peopleというアメリカの大学は学費無料で有名です。私も一時期そこに在籍していたのですが、そこで行われていた英語の授業は、まさにこの「読書→アウトプット→友達同士でレビュー」というPDCAサイクルを活用したものでした。
無理に大学に入らなくても、知的民度の高いSNSを活用することで、同じような体験を再現可能です。

続かない原因は、感情移入ができないから

英語力を上げるためにリーディングを始めてみたけれど、どうしても三日坊主で終わってしまうという声をよく聞きます。私自身もかつてはそうでした。高校時代にヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」の原書を読もうとしたところ、最初の数ページで挫折した覚えがあります。
原因はシンプルです。知らない単語が多すぎるのです。そうすると、いちいち辞書で調べなければなりません。結果、1ページ読むのに何十分もかかってしまいます。果たして、そのようなスローな読書体験において、感情移入ができるでしょうか?
知らない単語が4割以上ある文学作品を辞書を引きながら読むことは、スローモーションで映画を見ているようなものです。一定限度を超えてあまりにもスローだと、感情移入ができません。だから面白くなく、教訓も得られず、結果持続しないのです。
卓越した英語の使い手だった渡部昇一氏は、20代後半になって初めて海外のペーパーバック小説を本当の意味で楽しめて「泣ける」感覚を味わえたと述懐されていましたが、「感情移入をできるかどうか」は、内容を本当の意味で理解できているかの重要なポイントです。
感情移入ができない読書体験は、長続きしません。
もしそうなっていたら、レベルを一段落としましょう。

いかがでしたでしょうか。次回は、インプットの次はアウトプット。ライティング力強化の際に、手持ちの語彙で表現する力を鍛えていくステップについて解説していきます。お楽しみに!