直観的に楽しく学べる? 「語学アプリ」のワナ


英語学習イメージ

こんにちは!教育家の石橋勇輝です。
今回の連載では、
・英語をゼロから学びなおしたい方
・お子様の英語力をアップさせたい方
に向けて、「絶対にやってはいけない英語学習法7選」と題してお送りします。
連載第二回のテーマは「語学アプリ」。
英語の学習を始めるにあたって、
「とりあえず語学アプリに毎日取り組んでいれば英語って上達するのかな?」
と思っていらっしゃる方も多いのではないかと思います。
しかし実際には、語学アプリをインストールして毎日取り組んでいるだけでは、決して英語力は上達しません。
効果的に使いこなして初めて、「語学アプリ」は英語力上達のためのパワフルなツールになります。
今回は、アプリストアに無数に転がっている「語学アプリ」との正しい付き合い方を通した、英語の学習法のコツをお伝えします。

石橋勇輝のプロフィール:小4から公文で英語を始め、留学経験ゼロで中3で英検一級を取得後、TOEIC990点三年連続取得。iELTS 7.5、TOEFL iBT108点。また、家庭教師として数百人の小中学生を個別指導し、駒場東邦や開智をはじめ難関中学校に多数合格させ、英検準1級~5級まで合格に導いた経験を持つ。

「アプリ」は「サプリ」

最初に申し上げておきたいのは、「アプリ」はあくまで「サプリ」だということです。
世の中には、「このアプリをやるだけで英語力がこんなに伸びます!」と謳っているアプリがたくさんありますが、そのアプリだけで英語力が向上するとは思わない方がいいでしょう。
サプリはサプリであって、決してメインの栄養源にはなりません。筋肉をつけていくためには、プロテインを飲むだけではなく、やはりしっかりとした「食事」をする必要があるのです。
本気で英語力を上げたい、という場合には、基本的に何らかの定量的なアウトプット(TOEICやTOEFL、あるいは本記事後半でご紹介するDuolingo English Testなどの各種資格試験、スピーチ大会、もしくはディベート大会への出場など)を見据えて目標設定を行った上で、対策教材を購入し努力していくことが必要になります。

アプリをやるなら目的をしぼろう

英語学習にアプリを取り入れる際に重要なのは、目的を絞って定量的なゴールを設定することです。
YouTubeやインスタグラムの広告に流れてきたものをただクリックして、受動的にインストールしてなんとなく始めてみた…という場合でも稀にうまくいくケースもありますが、能動的にアプリを使いこなしていかない限り、英語力は基本伸びません。
英語アプリには主に、「多読系」「発音系」「文法系」「単語系」などのジャンルがありますが、それぞれのアプリの強みをきちんと把握し、自分がこのアプリに取り組むことで英語力のどの側面をどの程度アップさせようとしているのかを把握しましょう。
たとえば単語系のアプリであるなら、どの分野の単語をいつまでに何個覚えるのかを目標設定してから取り組みましょう。特にここで重要なのは、一口に「初級英単語」と言っても無数の種類があるということです。英検3級の対策をするのか、TOEICの対策をするのか、はたまたiELTSの対策をするかによって、対策すべき範囲が全く変わってきます。

アプリは「新書」と同じ

語学系のスマホアプリは、基本的に「新書」と同じ姿勢で活用するのが良いでしょう。
新書は、物事の概要を掴むことに便利ですが、それ以上の内容は提供してくれません。もっと詳しいことを体系的に学びたければ、分厚い専門書に手を出す必要があります。そして、新書は長くて一週間くらいかけて読み切る分量であるのと同様、一部の例外を除き、大抵のアプリは3ヶ月程度で「賞味期限」が来ます。
一般的なスマホアプリの開発期間は、4ヶ月〜半年と言われているので、そのアプリに注ぎ込まれた「工夫」や「知的労働力」はその程度だと判断して良いでしょう。もちろん、定期的なアップデートを経て内容が常に更新されていたり、ユーザーからのフィードバックを得てAIが常に成長し続けているようなアプリは話が別ですが、基本的な考え方として制作にかかった時間以上を習得に費やすのは時間効率が悪いと言えるでしょう。

アプリによって演出される「努力している感」はむしろ危険

なぜここまで目的意識やゴール設定の大切さを述べているかというと、現代社会にはコンテンツが溢れかえっていて、それらの大量のコンテンツは広告を通して、あなたの貴重な時間を1秒でも奪おうと常に待ち構えているからです。
もちろん、語学学習アプリは、他の漫画やSNSを開く時間よりはまだ英語力向上に資する時間を提供してくれるでしょう。
しかし実際には、勉強をやっているつもりでいながら、「努力している感」を自分の中で演出しているだけ、という結果に繋がりかねません。これが危険なのは、それを長く続けていると自己信頼や自己効力感が落ちてくるという事実があるからです。
「頑張っているのに成果が上がらない」
「これだけの時間勉強してきたのに、全く点数に反映されない」
こうした経験をすると、あなたは努力そのものの価値を疑うようになってしまいます。
ところが実際には、問題があるのはその学習法の中身そのものなのです。

定期的に自分の実力を図ろう

アプリを活用する際に重要になってくるのは、3ヶ月〜半年単位の区分を自分の中で設定し、それぞれの段階におけるマイルストーンを設定することです。そこで立てた目標を実現するためにはどんな能力が必要になるかを考え、そこから必要なアプリや教材を逆算します。

これからの英語学習の中核を担う「Duolingo」

もしおすすめの英語アプリをただ一つ選べと言われたら、私は迷うことなく「Duolingo」をご紹介します。こちらは多くの方が聴いたことのあるアプリかとは思いますが、Duolingoは単なる英語アプリに止まらず、これからの英語教育を牽引する力強いプラットフォームになっていきそうな気配を見せています。
Duolingoのおすすめポイントとしては、世界一流の英語教育の専門家たちの知見をフルに取り入れたプログラムが可愛らしいイラストと直感的な操作感でスルスル入ってくる点に加え、ネイティブの音声を常に確認しながら進めるところや、AIを用いた自動最適化で常に自分のレベルにあった問題を学習できるところなど、たくさんあります。(ただ、間違えた問題を完全に自力で正解できるまで終われないところが苦しいところではありますが。)

近い将来にTOEICを超える次世代英語テスト「Duolingo English Test」とは

しかしそれ以上に私が「Duolingo」をオススメする理由は、教育プラットフォームとしてのDuolingoが、TOEICに並ぶ独自の検定試験を開発して世界的に普及させていっているという点にあります。
その名も、「Duolingo English Test」。2019年のコロナ禍で、多くの学生がTOEICやTOEFLの試験会場に行って試験を受けることのできない状況の中で、「自宅で受験したい」というニーズに応えて全世界に普及しました。2024年5月現在でイェール大学、コロンビア大学、MITなど、4,500校以上の出願で採用されています。つい最近も、ドイツの音大に留学したいという私の友人に、「出願の都合で急遽1ヶ月以内に英語力を証明する書類が必要になったんだけど、どうしたらいいかな?」と聞かれた際に、私は真っ先にこのDuolingo English Testを薦めました。
このテストはいつでもどこでも何度でも受けることができ、採点結果も受験直後に得ることができ、その得点証明を進学や就職の際に実際に使用することができます。
さらに、問題自体はAIの力をフル活用して作成されており、要求される英語力も現代のグローバルなネット環境に柔軟なものになっています。
まさに「次世代の英語テスト」です。これから英語を勉強される方は、TOEIC対策よりこちらの対策を始めた方がいいでしょう。(もちろん、日本の企業ではいまだにTOEIC重視の風潮がしばらく続くかもしれませんが。)

 いかがでしたでしょうか。次回の連載では、「語学参考書」のワナについて解説していきます。お楽しみに!