英語の総合力は「スピーチ」で鍛える! 四技能を飛躍的に向上させる禁断の学習法を紹介


英語学習イメージ

こんにちは! 教育家の石橋勇輝です。
今回の連載では、
・英語をゼロから学びなおしたい方
・お子様の英語力をアップさせたい方
に向けて、「ゼロからの英語学習法」と題してお送りします。
連載第六回では、
「英語スピーチ」にフォーカスして、
・会社で英語スピーチを頼まれたけど、どう対策していいかわからない…
・リーディングやリスニングはできるけど、自分の意見を英語で発信できる自信がない…
・英語で人の心をつかめるようになりたい…

そんなお悩みをお持ちの方に向けて、とっておきの内容をお届けしていきますね。

石橋勇輝のプロフィール:小4から公文で英語を始め、留学経験ゼロで中3で英検一級を取得後、TOEIC990点三年連続取得。iELTS 7.5、TOEFL iBT108点。また、家庭教師として数百人の小中学生を個別指導し、駒場東邦や開智をはじめ難関中学校に多数合格させ、英検準1級~5級まで合格に導いた経験を持つ。

スピーチは四技能をバランスよく鍛える

日本で英語を学習していると、どうしてもTOEICに代表される「読む、聞く」が中心の英語力に偏ってしまいがちです。しかし、インプットの能力ばかり鍛えていても、自分から英語で意見を発信する力を身につけることはできません。
スピーキングのためには英会話教室などでの会話の練習ももちろん効果的ですが、英会話の際には文法力は一才問われないため、ブロークン・イングリッシュが身についてしまう危険性もあります。また、英会話教室の場合、ネイティブの先生がイニシアチブをとって会話を進めてくれるため、自分の中で意見を構成して能動的に発信する力は身につかないことが多いです。

では、どのようにして、ライティングやスピーキングも含めた英語の四技能をバランスよく鍛えていくことができるのでしょうか?

その答えが、「スピーチ」です。
スピーチの学習法は、大きく分けて二つの段階があります。
①伝説的な名スピーチを何度も聞いて、マネをして、自分で再現できるようになる。
②自分でスピーチを書いて、何度も練習して、人前で発表する。

ここではまず、①の学習法について見ていきましょう。

日本の「アニメ」、海外の「名スピーチ」

海外の方で日本語がやたら上手な方に、「どうやって勉強したんですか?」と聞くと、大抵「日本のアニメを見て勉強しました」という答えが返ってきます。「アニメをみるだけで言葉が喋れるようになるのか?」と驚いてしまいますが、アニメを学習教材として分析すると、以下の要素が含まれています。
・会話の中でストーリーが進行するため、常に文脈の中で単語を理解できる
・キャラの感情がセリフに乗っているため、自然なイントネーションが身に付く
・印象的なセリフについて、日常の中でも使ってみたくなる

これらの特徴は、英語圏の「名スピーチ」にも漏れなく当てはまります。もちろん英語圏のアニメを見て学習するのも良いのですが、欧米圏において日本における「アニメ」くらいの文化的な高みに達しているものは、やはりこの「スピーチ」もしくは「映画」しかないのではないかと私は考えています。
そのうちでも、ダントツでスピーキング力向上に役立つのが「スピーチ」です。

英語の母音や子音一つ一つの発音が比較的上手な方であっても、なんとなく全体的な聞こえ方がよくない方がいらっしゃいます。こうした場合、「英語のイントネーション」や「感情を込めるさいの強調の仕方」などをスピーチで学ぶことが効果的です。
哲学者ルソーは、言語と音楽は同じ起源を持っているという説を唱えましたが、実際に言語には「音楽性」があるので、そのリズムやピッチがずれていると、「英語音痴」のように聞こえてしまう危険性があるのです。その状態から脱するには、「言語音楽」の名演奏家であるプロによるスピーチを何度も何度も聞いて、真似して、そのリズムとピッチを体得することが一番の近道です。

スピーチを通して「ジョーク」を学ぶ

名スピーチを学んでいることによる思わぬ効用として、「ジョーク」の感覚が自然と身に付くようになります。
最近でいえば、岸田首相が訪米した際のスピーチで、ジョークのうまさで会場を拍手に包み込んだというニュースがありましたね。岸田首相は幼い頃にニューヨークに滞在していたこともあり、ニューヨーカー独特のユーモアセンスに通じていたようです。話の内容よりも序盤のジョークのウケの良さが大手紙の見出しに掲載されるくらいですから、欧米圏でどれほどこうしたジョークのセンスに重きが置かれているかがわかります。
また、宇宙飛行士の若田光一氏も、ご自身の著書の中で、海外の宇宙飛行士と仲良くやっていくための「ジョーク」の大切さを力説されていましたね。
名スピーチを学ぶと、話者が要所要所で聴衆の心を緩ませ、距離を縮めるための「笑い」の要素を織り交ぜていることに気づきます。日本の文化では「漫才」や「落語」といった要素に当たるかと思いますが、欧米の文化ではこれらの要素が真面目な場面の中に自然と入ってくるのです。
「ジョーク」に特化した教材はあまりないのですが、「スピーチ」を学ぶことで自然と「ジョーク」のセンスが磨かれていきます。

スピーチを通して「欧米文化」を学ぶ

また、英語スピーチを学ぶことで、欧米圏の方々が暗黙の前提にしている「古典的教養」や「文化」を自然と体得することができます。
ここでおすすめの本として、「名演説で学ぶ アメリカの文化と社会」という本をご紹介させていただきます。
この本では、オバマ大統領からマイケル・ジャクソンに至るまで、アメリカにおける政治・文化・芸術・科学のさまざまな分野のリーダーたちが行った演説を、肉声による音声とともに学ぶことができます。

ここで私自身が非常に影響を受けたスピーチをいくつかご紹介します。

・ケネディ大統領の大統領就任演説。「Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.」(「国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えようではありませんか。」)というセリフが有名なものですね。
ケネディ首相の言葉の一つ一つが非常に力強く、聞いているだけで生きる勇気が湧いてくるスピーチです。
他にも、
・俳優のトム・ハンクスがニューヨーク私立ヴァサー大学の卒業式で行った「The Power of Four」という演説もおすすめです。
俳優だけあって、一つ一つのセリフへの感情の込め方が達人級です。俳優といえば、ウィル・スミスも非常に感動的な演説を残しており、こちらも非常におすすめです。

自分でスピーチを書いて、発表してみよう

名スピーチを学んだら、次は自分でスピーチを書いてみましょう。
とはいっても、発表の場がないとモチベーションも湧かないですよね。会社でスピーチの機会があればそれは絶好のチャンスとして活用しましょう。もしそうした機会がない場合、社会人向けの英語スピーチコンテストもたくさん開催されているので、時間を見つけて応募してみるのも良いと思います。
まずは発表の場を見つけ、期限を明確に設定しましょう。
その上で、自分の心の中にあるアイデアを実際のスピーチ原稿に落とし込んでいくことになります。とはいっても、いきなり書くのは難しいので、身近にサポートしてくれる方をつけて、二人三脚でやる方が進めやすいですね。書籍の出版の際の「作家」と「編集者」の関係のように、自分の考えを受け止めて投げ返してくれる存在が一人いるだけで、原稿作成作業が非常にスムーズに行えるようになります。身近でそうした方が見つからない方は、英語コーチのような方を見つけてきて、個人的に依頼してみるのがおすすめです。

原稿が書けたら、今度は練習です。この際、恥ずかしいかもしれませんが、自分のスピーチ練習を映像で録音して、撮った後すぐに見返すことをおすすめします。私の知り合いに大物YouTuberの方がいらっしゃるのですが、その方によると、「YouTuberの喋りがうまくなっていくのは、自分が喋った映像を何度も繰り返しみているから」だそうです。同じ原理で、自分の練習映像を見返すことで、イントネーションや発音、感情の込め方、ジェスチャーの方法などの全ての要素を客観的に振り返ることができ、改善のスピードが加速します。
こうした練習を踏まえた上で、本番に臨みます。結果がどうあれ、これまでの練習を通して英語の四技能が飛躍的に成長していることに間違いはありません。

いかがでしたでしょうか。次回の最終回では、英検一級、TOEIC満点の先に広がる、果てしなき英語道について解説していきます。お楽しみに!